5.16.2013

my work

「きみの名前は?」
ぼくはたずねた。
ふり向くと、彼女はじっとぼくの顔をながめた。
そして、こう言ったのだ。
「名前を言っても、わたしのことが理解できるわけではないわ。」
彼女は不思議な人だった。
とても変わっているし、考え方がおもしろい。
「もちろん、そのとおりだけれど、なんらかの方法で自分であることを
証明しなくてはいけないだろう」
「うわべだけの名札をつけるのではなく、本当の自分を見せる方がいいわ」
ぼくもその意見には賛成だったが…。
「じゃどうやって本当の自分を見せるのかい?」
「こうやって」
と答えると力をこめてぼくを見つめた。
ぼくは彼女は本当に美しいと思ったが、
彼女はその後は何も言わず、視線を夜景に戻してしまった。
「ちょっと待って。まだきみの答えを聞いてないよ」
「答え?」
「本当のきみについてだよ。まだ何も言ってないよ」
「本当のわたしというのは言葉にはできないわ。だけど、もうあなたに見せたのに」





「仕事は何を?」
ぼくはたずねたが、大方モデルか女優に間違いないと考えていた。
「生きる、ということを」
「もちろん、だれだってそうだよ」
「みんなと同じではないわ。わたしの人生を生きているの」


−エンリケ・バリオス『ツインソウル』

2 件のコメント:

  1. こんばんは。
    この詩がなんだか心にじーんときて思わずコメントしてしまいました。
    いつも更新楽しみにしてます(^^)
    お邪魔しました♬

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  2. 私がとても好きな一節です。
    ありがとうございます!

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